2014年 10月号 記事 3面
  •  原子力発電のその起源は、原子力潜水艦にあると言われている。それまでの潜水艦は、海上で空気を取り込み、ディーゼルエンジン等で発電し、それを蓄電して海中に潜行するものであった。したがって限られた時間しか潜行し続ける事はできず、潜水艦本来の隠密作戦行動には欠点となっていた。
    戦後原子力潜水艦が開発されると、その能力は格段に上がった。原子力発電自体には酸素を必要とせず、作戦行動中に海上に上がる必要がなくなったのだ。しかも原子力発電する過程で、酸素が発生する為艦内の人間が必要とする酸素の補給も必要がない。
    東日本大震災で福島第一原子力発電所が「水素爆発」した事を覚えているだろうか?原子力発電の副産物として水素が発生した結果の事である。
    この水素から、人間に必要な「水と酸素」を原子力潜水艦は寄港して補給する必要がなく自身で製造できる。これにより理論上半永久的に潜行できる性能を持つ事ができた。この事と、ミサイルの発展により潜水艦の役割は大きく変わり、原子力潜水艦と弾道核ミサイルを持つだけで、安全保障体制は劇的に変わり、例えアメリカのような超大国でも油断できなくなる。
    また原子力発電には「冷却水」が必要だが、潜水艦は海の中で行動するのだから、いわば「冷却水の中」にいる訳で、原子力発電はまるで潜水艦の為にあるように思える。

    簡単に言うとこの原子力潜水艦を陸上に上げたものが原子力発電所だ。陸上に上げた事により常に機械的に冷却する必要が出来てしまった。福島第一原子力発電所の事故の全容はまだ解明されていないが、原子力発電には必要不可欠な「冷却水」が、津波により供給されなくなってしまった事が、第一の原因である。発電所が「電源喪失(電気が無い)」により事故につながると言う、笑い話ではすまない重大な結果をもたらしてしまった。
     
    日本の原子力発電所は昭和29年中曽根康弘元総理(当時改進党)が国会に開発予算を提出したところから始まっている。この時の予算は2億3,500万円で、ウラン235の語呂合わせだったと言われている。冗談のような話だが、当時は開発費用の予測も十分にはできず、「とりあえず始めよう」と言う事だったといわれている。
    翌年(昭和30年)の12月に原子力基本法が成立し、原子力利用の大綱が定められた。その翌年(昭和31年)1月原子力委員会が設置され、その初代委員長は読売新聞社主の正力松太郎氏である。この年の6月には日本原子力研究所が茨城県那珂郡東海村に設立された。よく原子力発電所の話になると「東海村」と言う名前が出てくるが、東海地方にあるように誤解される事がよくあるが、茨城県(関東地方)の東海村である。
    正力氏は就任の翌年(昭和32年)4月には原子力平和利用懇談会を立ち上げ、日本の原子力発電所建設導入に大きく貢献した。そしてこの年の11月、電気事業連合会の9電力会社により日本原子力発電株式会社が設立された。これにより日本の原子力発電に向けての、足場は固まり原子力発電へと進んでいく。当時の日本はまだ先進国とは言えず、原子力発電は「夢の発電」であった。
    ちなみにこの頃アメリカNYでは、摩天楼と言われる高層ビルが建設されていたが、日本では神社などの五重塔程度の高さの建物しかなかった頃で、高速道路も無ければ、新幹線も無い。今の日本では考えられないくらい、日本の技術は世界から遅れを取っていた。
    日本に初めて原子力発電が行われるまでには、それから6年後の昭和38年の10月の事である。東京オリンピックの前年の事であった。
    日本初の商業用原子力発電所は昭和35年に茨城県の東海村に英国製の黒鉛減速ガス冷却炉を取り入れ着工し、昭和40年5月4日に初めて臨界に到達した。しかしこのガス冷却方式は非効率的であった。その為その後の原子力発電所の建設は「軽水炉」と言う方式の物を採用する事になる。
    ガス冷却、軽水炉など、この分野に苦手な方にはわかりづらいかもしれない。
    発電の仕組みを解り易く大雑把に言うと、「タービン等何かを回転させる事」で電気を起こす。火力発電も水力発電も風力発電も原子力発電も全て基本的には、発電の構造は同じである。火力、原子力は発熱により水を蒸発させ、その水蒸気によってタービンを回す。水力発電は高い位置にある水を重力で落とす事による、位置エネルギーを使いタービンを回す。風力は風の力によって風車を回す。身近な物で言えば車のオルタネーター、ダイナモと言った方が年配の方には馴染み深いかもしれないが、これもエンジンの力をファンベルトで伝え回転させる事で発電している。
    太陽光発電等最近開発されたものでは、これに当てはまらない物もあるが、現状安定して電力を供給できる施設は、この「タービン式」である。

初めての方へ 記事をご覧になる前に是非一度、ご一読下さい。

2014年10月
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